出エジプト記２：１－１０　　　　神の密やかな働き


　　モーセのお母さんの信仰（２－７）
　　モーセのお母さんはモーセを救おうと最善を尽くします。三つのことが挙げられると思います。

　　＊彼女はまず、三ヶ月間モーセを隠しました（２節）。
　　＊その後彼女は、パピルスの籠を用意し、モーセをその中に入れ、それをナイル河畔の葦の　　　茂みの間に置きました（３節）。
　　＊モーセの姉にして見張り（４節）と、自分を乳母として紹介する（７節）ことでした。

　　モーセのお母さんは緻密な計画を立てました。人間が出来る範囲までの計画でした。そこまで彼女は命の救いのために最善を尽くしました。このようなモーセのお母さんの行いは何を意味するのでしょうか。ヘブライ書１３：２３によりますと、こうしたモーセのお母さんの行いは、彼女の信仰に基づいた行いでした。こう記していますね。「信仰によって、モーセは生まれてから三ヶ月間、両親によって隠されました。その子の美しさを見、王の命令を恐れなかったからです」と。モーセのお母さんは、神がモーセを救ってくださることを信じていました。それと同時に彼女らは、神のみを恐れていて、ファラオなどこの世の勢力、制度、権力に対しては畏れなかったのであります。彼女にとって唯一の相手は、「神さま」お一人であったのです。
　　
　　神の働き
　　モーセはファラオの命令を恐れなかった両親によって、生まれてから三ヶ月間、隠されました。やがてモーセはファラオの王女によって、救われ、王女の子となるのです。

　　＊５節：ファラオの王女が水浴びをしようと川に下りてきた。
　　＊６節：王女は、モーセを見つけます。彼女はモーセがヘブライ人であることを分かるので　　　す。それにもかかわらず、彼女はふびんに思うようになるのです。
　　＊７節：モーセの姉の話しを聞き、モーセの姉に乳母を頼み、結果的にはモーセの母親が乳を飲　　　ませるようにしてくれます。
　　＊１０節：王女の行動によってモーセを救われます。

　　モーセが救われたことは、彼が水の中からファラオの娘である王女の手、彼女の命令引き上げられたことのみを意味するのではないと思います。また、モーセの救いは、王女の慈しみによるものでもありません。モーセの命が守られたことは、ファラオの手から救われたことを意味するのです。神が救ってくださったことなのです。神の働きによってモーセは救われたのであります。神の密かな働きであって、また神の見えない手によるものであったのです。神の無限な「慈しみ」と「憐れみ」によるものでありました。神は人間の心を動かし、ご自分の御業をなさったのです。ファラオの娘の心を神は動かしたのです。王女は神の器だったのです。王女は神の救いの歴史の主人公ではなく、一つの付属品に過ぎなかったのです。

　　詩篇１２１篇の記者は、神の働きを賛美しています。「神は私たちの助けである。神は私たちの足がよろめかないようにする。主である神はまどろむことなく、見守ってくださる。神は眠ることなく、まどろむことなく、私たちの魂を見守る。主である神は私たちを永久に見守ってくださる」と。神は私たちのために、救いのために、今もこれからも永久までに、働いてくださるということです。神の働き、密やかな働きでも、私たちにとっては、「祝福」となるのです。

　　人間の計画を完成してくださる
　　モーセが「水の中」から引き上げられたことは、ファラオの王女によって救われたことのみを意味するのではありあせん。モーセの救いは、彼のお母さんの信仰的な行いによって与えられたものでした。神の助け、働きを信じ、神のみを畏れていた、モーセのお母さんの信仰の結果から与えられたものでした。言い換えれば、それは人間の信仰的な行いを完成してくださる神の働きによるものなのです。信仰者の働きは、神によって完成されるのです。モーセのお母さんの行いが、神の働きによって成就されたことと同じように、神は信仰者の計画、信仰的行いを完成してくださる、ということなのです。神が完成してくださるのでなければ、人間の計画はむなしいこととなってしますのです。

　　詩篇１２７篇の記者はこう記しています。「主ご自身が建ててくださるのでなければ、人の苦労はむなしい。主ご自身が守ってくださるのでなければ、町を守る人の目醒めているのもむなしい。朝早く起き、夜おそく休み、焦慮してパンを食べる人よ、それはむなしいことではないか」と（１－３節）。私たちがいくら素晴らしい、完璧な計画を建てても、神が結果を出してくださるのでなければ、それはむなしいこととなってしまうのであります。私たちの行いの結果は、すべてが神の手にゆだねられているからなのです。

　　箴言１６：３節では「あなたの業を主にゆだねれば、計らうことは固くたつ」と、箴言の記者は告白しています。またコヘレトの言葉３：１３では「人だれも飲み食いし、その苦労によって満足するのは、神の賜物だ」と。私たちの行い、計画などすべては、神からくるものであり、神によって完成されるべきであり、神の賜物です。詩篇１１８：７－９節では「主は私の見方。助けとなって、私を憎むものらを支配させてくださる。人間に頼らず、主を避けところとしよう。君候に頼らず、主を避けところとしよう」と。

　　キリストはその象徴
　　モーセが「水から引き上げられたことは、神の手によって救われたこと」を意味するのです。神の憐れみによって、モーセは救われました。神の慈しみによって、モーセのお母さんの信仰的な行いは完成されました。モーセにとって救いは、神から与えられた、「神の賜物」だったのです。それは、まさに私たちがキリストにあって、罪から救われたことと同じことではないでしょうか。十字架のイエス・キリストによって、私たちは「罪から引き上げられました」。私たちにとって「救い」は、十字架のキリストの働きによって与えられた賜物です。キリストによって救いは完成されました。十字架のキリストは、今も神は働いていることの象徴です。十字架のキリストを通して、私たちは神が私たちの避けどころであること、神が私たちを見守ってくださる方であること、十字架のイエス・キリストを通して、神は、私たちの「力」であることを分かりますね。ですから、私たちが知るべきお方は「神の力」であり「神の知恵」である十字架につけられたイエス・キリストのみです。神はイエス・キリストにあって、ご自身の救いの御業を完成させ、今日においても十字架のイエス・キリストにあって、働いており、さらにイエス・キリストにあって、神はご自身の民に対して哀れみ、慈しみを与えられているからなのです。毎日、神の憐れみ、働きの象徴である「十字架のイエス・キリスト」に近づいて参りましょう。