マルコ５：１－２０　　　　悪霊に取りつかれた人を癒す(귀신들린자를 고치심)


　　　

　　現代的な意味
　　現代社会は科学的原理に支配されているのです。それは原因と結果という「因果律」の思考方式です。人間が宇宙まで進んでいくことができたのは、まさにこうした科学的な思考方式と技術の進歩の影響によるものです。科学的な思考方式というのは、「１出す１は必ず２になるのだ」ということから始まるのです。私たちは「真理」と認め、このことが私たちを支配しているのです。理性で理解できないことは「神話」だ、あるいは「伝説」だと退けてしまうのです。人間の「頭」、また「眼」、で確認できることのみ、また私たちの言葉で説明できることのみを、信じようとしているのです。私たちの理性の範疇をはるかに超えた事実、あるいはそのような存在に対しては、否定的ではないでしょうか。例えば、この箇所に出てくる「悪霊」の存在と「悪霊に取りつかれた人」のことなどに対しては、「妄信」だ、あるいは「迷信」だと言ってしまう傾向が強いのではないでしょうか。私たちは信憑性が高いこと、科学的に実証されたことのみを「真理」と認めているのです。これが私たちの社会を支配している原理です。

　　ところが、こうした考え方に対して聖書は、「そうではありませんよ」と反論しているのです。つまり、人間が分らない「世界」があるのだ。また私たちの考え方で説明できない「存在」もあるのだ。実証、検証できないことがあるのだ、ということを教えているのです。それを見るには、科学的な目ではなく、信仰の目が必要であると、聖書は証ししているのです。今日の箇所に出てくる「悪霊に取りつかれた人を癒す」奇跡を通して、キリストはまさにそうしたことを教えているのです。


　　悪霊の特徴
　　キリストは誰も縛っておくことが出来ない「汚れた悪霊」に取りつかれた人を癒しました。この悪霊とキリストとの違うところをまず、見たいと思います。悪霊の特徴です。６節をみると「彼は昼も夜も墓場や山で叫んだり、石で自分を打ちたたいたりしていた」と記しております。自分の体を傷付けることをこの人はしていた、ということですが、実はこの男がやったことではなくて、この人を取り使っていた「汚れた悪霊たち」の力によることでしたね。

　　次は、悪霊も「神」を知っているのです。7節で「大声で叫んだ。いと高き神の子イエス、かまわないでくれ。後生だから、苦しめないでほしい」と。神を知っているし、イエスのことも知っているのです。似たようなことが、使徒言行録１９：８－２０節にも出てくるのです。この箇所はパウロのエペソでの伝道のことを伝えているのです。そこでパウロは、病気を癒し、また悪霊に取りつかれた人をも癒したのです。それは、彼がやったことではなく、神がなさった癒しでした。

　　ところが、その地方の祭司長スケワという人の七人の息子たちが、パウロがやったことをマネしていたのです。１５節をみると、「悪霊は彼らに言い返した。イエスのことは知っている。パウロのことをもよく知っている。だが、あなたたちは何者だ」と。マルコ６：１－３までをみると、人々はイエスを「単なる人間」として見て、また「大工」ではないか、そんな人間どうして奇跡を行っているだろうか、と驚いているのでが、キリストの神性を認めようともしないのです。しかし、悪霊は「イエス」のことをよく知っていて「神の子」というのです。人間より神に対する知識をもっている、ということなのです。

　　第三は、しかしながらイエスの力は悪霊に打ち勝つのです。どんなに強い悪霊でもイエスに打ち勝つことはできないのです。これが一番大事なことですね。悪霊は人間の体や人格を傷つけることはできるが、キリストに逆らうことはできないのです。マルコによる福音書５：８－１３をみてきださい。悪霊はイエスに追い出さしないように、とお願いをするのです。そしてイエスに一つ提案をするのですね。イエスに申し出をするのです。それは「２０００匹ほどのブタの群れに入りたい」ということでした。イエスがそれを許すと、「悪霊たちは２０００匹ほどのブタの群れ」の中に入ったわけなのです。キリストの許しがあってから始めて、悪霊は行動ができたのであります。イエスの命令に従って行動をしたわけなのです。キリストに徹底的に従順しているのです。神の前で悪霊は存在意識失ってしますのです。神の御前で悪霊は何の価値のない存在に過ぎないのです。

　　こうしたことは私たちに大きな恵みなのです。それは、悪霊は私たちが恐れる対象ではないということなのです。「レギオン」の悪霊でも恐れる必要ではないのです。私たちが恐れるべき方はイエス・キリストであるのです。またイエスを真実に信じる人は悪霊に取りつかれることはないのです。イエスが悪霊に打ち勝ったので、私たちはイエスの名によりて、悪霊に打ち勝つことができるのです。


　　イエスの価値観
　　このイエスの癒しは「苦境に直面している人間に対するイエスの憐れみ」を教えているのです。イエスの憐れみは人間の価値を尊重したのです。人間の命を救うこと、人間を苦痛から自由にさせることがイエスの働きの本質であったのです。２０００匹ほどのブタの群れより、一人の人間の命を大切にした、こうした心がイエスの御心であったのです。イエスの命に対する価値観は、量的なものではなく、質的なものであったのです。
次に、イエスの憐れみの特徴は、「嫌悪な人間をいだくもの」であった、ということです。悪霊に取りつかれた人がイエスのもとに走り寄ってひれ伏すと、イエスはその場で、この人を癒してくださいました。人々にとって嫌悪の対象であった「この人」をイエスは抱いてくださったのです。人々に見捨てられた人間の魂に対してイエスは愛情を注いだのです。人々の目には「もうだめだ」あるいは「可能性」のないと判断された人に対して、イエスは「新しい可能性」を与えたのです。

　　さらにイエスはどんなに苦しい苦境に直面していても決して「恐れること」はしなかったのです。悪霊に取りつかれた人には「レギオン」という悪霊でした。その悪霊の数はすくなくとも２０００匹ほどだったと思われます。また、この悪霊に取りつかれた人は、誰も縛ることが出来ないほど、乱暴でした。けれどもイエスは「恐れる」ことはしなかったのです。むしろ、イエスが彼に近づくと、悪霊たちがイエスを「恐れた」のです。イエスは悪霊に取りつかれた人に「神の憐れみ」を与えたのです。キリストの愛は「嫌悪」「苦境」を乗り越え、新しい「可能性」を与えるのです。キリストの憐れみは、「恐れ」を克服し、人間の「苦しい過去」から解放してくださる「神の力」であり、また「神の恵み」なのです。また、そうした憐れみによって与えられた「神に対する信仰」を通して、私たちは「未来に対する不安」や「現在の恐れ」を乗り越えていくのです。

　　ヨハネによる福音書１４：１で「心を騒がせるな。神を信じなさい。そして私を信じなさい」とイエスはおっしゃいました。また２７節においてもイエスは「私は平和をあなたに残し、私の平和を与える。私はこれを世が与えるように与えるのではない。心を騒がせるな。おびえるな」と仰せられました。キリストを信じることは「この世の病から自由になること」です。「この世を恐れないこと」なのです。最悪な苦境に直面していても「平和」をもつことなのです。


　　最後に、マタイによる福音書６：２５－３４までのみ言葉を共に読んでみましょう。


　　キリストの憐れみは私たちの病を克服し、平和の中を走れる力ではないでしょうか。