マタイによる福音書１：１８－２５　　「インマヌエル」임마누엘



      教会の柱
　　今日は待降節の第4週目であります。第四のろうそくがもとされました。主を待ち望んでいる私たちに、今年にもクリスマスがやってきます。この「クリスマス」は教会を支える「柱」の中の一つなのです。インカーネーション、すなわち受肉なさったイエス・キリストにより、キリスト教は始まったからなのです。

　　実は、クリスマスが歴史上に始めて登場したのは、３世紀から４世紀ごろだと言われております。初代教会の人々にとってクリスマスは、重んじられる日ではありませんでした。復活を中心とした信仰が彼らの関心事であったからです。しかし、３世紀―４世紀になってから、教会内部に異端が現れ始めました。彼らはキリストの人生を否定、キリストの神性と人生といった問題が教会の信仰を揺り動かしはしめました。異端の出現のため、教会は信仰的な危機、実存の問題にぶつかったわけなのです。それで、教会はイエス・キリストは「真の神であり、真の人間」だという聖書の教えを確立し、異端から教会を守るために、クリスマスを制定したわけであります。それでは、クリスマスは私たちにどういう意味のもつ日でしょうか。


　　イエスのお誕生：神の計画
　　先ほど、読んで頂きましたマタイの証言によりますと、イエス・キリストは聖霊によって身ごもられ、聖霊がなさった出来事だと伝えているのです。１８節ですが「イエス・キリストの誕生の次第は次のようであった。母マリアはヨセフと婚約していたが、二人が一緒になる前に、聖霊によって身ごもられたことが明らかになった」と。また、２０節をみますと「マリアの体の子は聖霊によって宿ったのである」と、主の天使はヨセフに神の計画を伝えました。この箇所より確認できるように、クリスマスの第一の意味は、イエス・キリストのお誕生が神の計画であり、その計画が歴史の中で実現されたところにあるのです。

　　神の計画は罪人の救いなのです。ヨハネに福音書３：１７ですが、「神が御子を世に使わされたのは、世を裁くためではなく、御子によって世が救われるためである」と書かれてあります。キリストが「お生まれになったこと」は、「神が世に御子を遣わされたこと」なのです。イエス・キリストのお誕生は人類にとって「救いの喜びのお知らせ」です。

救いが必要なのは、「救われてない状態」を前提にします。医者が要ることは病で病んでいる人々がいることを意味します。それと同じように、人類の救い主がお生まれになりましたことは、人類が罪によって苦しめられている、ということを意味するのです。神から断絶されている人々は、常に、不安、恐怖、罪責感などによって苦しんでいるのです。人間は、死に対する恐怖を克服するために、偶像を崇拝するのです。ある人々は快楽を楽しむです。しかしながら、これらの「人間の営みの結果」は、人間をして「厭世主義」に陥らせてしまうのであります。

　　神が人となり、この地上にお生まれたのは、私たちを罪から救われるためであり、これが神の計画です。絶えず絶えず神から逃避しようと試みている私たちのために、イエス・キリストはお生まれになったのであります。


　　神の計画：インマヌエル
　　神の計画が歴史の中で実現されたことは、神が言われたことが空しくことにならないこと、必ず成就されることを意味するのです。私たちは自分が口に出したことをも、すぐ忘れてしまうのであります。約束を変更させたりします。自分に何の利益がなければ、その約束を破るときも、たまにはあるのではないでしょうか。

　　ところが、時の問題はあるのですが、神の計画、また人間に対する約束は、必ず成し遂げられるのです。２３節ですが「身よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる」と書かれてあります。これは、キリストの誕生約６００年前に、預言者イザヤの口を通して言われた神の約束です。私たちと共におられるためにその約束通りに、神は人となりました。

　　神が「インマヌエルの神となったこと」は、どこでも、つねに、何をしても、共におられるということなのです。神が私たちにとって身近な存在になってくださることの意味です。私たちの父なる神は身を隠している方ではないことです。遠いところにおられる方ではないということなのです。神は喜びのときだけ私たちと共におられるのではありません。悲しいときにも共におられます。孤独の中で、生きていく意味が分からなくなったとき、神はそこにいます。


　　あるキリスト者の夢
　　ある、キリスト者がこう夢をみました。彼は夢の中で、神と共にある海浜を歩いていました。きれいな海浜だったので、後ろをみますと、二人の足跡が鮮明に残されていました。ところが、あるところに一人の足跡が残されていることに気がつきました。そして、また二人の足跡が残されていました。

　　一人の足跡しか残っていないときは、実は、このキリスト者が、人生の中で一番、つらかった時期でした。それで、このキリスト者は神に、こう言いました。「あなたは平安なときには、私と共にいました。しかし、私が人生の中で一番つらかったとき、なぜ、私を独りで歩かせたのでしょうか」と。そうすると、神はこう答えられました。「私はあなたとずっと共にいた。あなたがつらく思ったときも、幸せなときにも、いつもあなたといた。先、あなたがみた独りの足跡は、実は私の足跡だ。私はその時、あなたを背負って歩いたのだ」と。

　　神が人となり、共におられるのは、私たちを愛しているからです。愛の神は私たちを一人で歩かせることはしません。私たちは神の計画、あるいは約束に疑いをもつが、神はそんな私たちをおんぶしてくれるのです。めん鳥が雛を羽の下に集めるように、神はご自身の影の下に私たちを集め、見守ってくださり、導いてくださるのです。神は老いの日にも見放さず、力が尽きても捨て去れないのです（詩７１：９）。私たちが老いて白髪になっても、神は共におられるのです（詩７１：１８）。イエス・キリストがお生まれになった「クリスマス」は、神がインマヌエルの神であるという約束の始まりであり、絶頂であるのです。それゆえ、私たちにとって、クリスマスは「喜ぶべき日」となり、「お祝いすべき日」となるのです。


　　あげるべきプレゼント
　　クリスマスは単なる「祭り」ではありません。クリスマスは「恵みの日」です。この世を最後まで愛しておられ、イエス・キリストにあって常に救いの御手を伸ばしておられる神の働きを覚える日です。神の約束の実現を覚える日です。「言は肉になって、私たちの間に宿られた。私たちはその栄光を見た。それは父の独りの子としての栄光であって、恵みと真理に満ちていた」（ヨハネ１：１４）。

　　また、クリスマスは「イエス・キリスト」というプレゼントをあげる日です。おそらく、クリスマスの季節になりますと、色々なプレゼントをあげたり、もらったりするのです。教会などでは悲しみの中、あるいは寂しさの中で生涯を送っている人々を訪れていくのです。彼らに、物質的なプレゼントをあげたり、精神的に慰めたり、するのですね。しかし、彼らに何よりも最も必要なプレゼントは、イエス・キリストです。人間の慰めは時間がたつと、忘れてしまうのです。あげたものも、時間がたつと無駄なものになってしまうのです。しかし、イエス・キリストは、無駄なものになることも、人間の記憶から消されることもありません。イエス・キリストは、この世界の「大きな喜びのお知らせ」からです。あの方からのみが、真の平安、真の慰めであるのです。クリスマスは神の救いの出来事であり、この世に対する神の救いの意志が現れた日でもあります。そして、教会と私たちの信仰における支えであります。