フィリピの手紙４：１０－２３　　　　　キリストにある満足　　　　



　　満足しているのか。
　　ある調査によると、「あなたは今の生活に満足していますか」、という質問に、日本人の半分は「満足しています」と答えたそうです。アメリカ人は「７７％」が満足すると、オランダの人は「９０％の人が満足」するという調査報告書をみたことがあります。私たちは「満足」というとき何が頭の中に一番初めに浮かんでくるのでしょうか。「満足」といのは、「１ 心にかなって不平不満のないこと。心が満ち足りること。２ 十分であること。申し分のないこと」だと分かっていますが、果たして言葉の通りに「満足」しているのでしょうか。

　　私たちはいつも、環境に影響されやすいので、状況が変わると不満の言葉を口にするのではないでしょうか。また、自分の期待の通りにならなかったとき、すぐに不平、つぶやきをもらすのではありませんか。それと同時に、「満足する」ことは「喜び」のことであり、そうではないことは「悲しいこと」だと、何となくセットにして考えていることもあるのでしょう。


　　パウロの満足（１０－１１）
　　１０節です。「私は主において非常に喜んでいます。今までは思いはあっても」。今も、非常に喜んでいます、という告白でしょう。１１です。「わたしは、自分の置かれた境遇に満足することを習い覚えたのです」。どんな状況に置かれていても、自分は「満足」することができるということなのです。パウロのいう「満足」という言葉は「autarugesu」といいます。新約聖書ではここだけで出てくる言葉なのです。その意味は「これ以上、求めることはない」という意味なのです。

　　パウロがこのような告白ができる原因は「主において」という箇所が示しているように、生きておられる神との交わりがあったから、彼は常に「満足」することができたわけなのです。自分が置かれている環境がどんなものであっても、それは何の問題にならなかったのであります。その状況がいくら悲しいものであっても、苦しめるものであっても、その環境自体も「神の御胸」であります。そこで、神が求めておられることを捜していくこと、すなわち、環境を神の啓示の道具として用いておられる神を仰ぐとき、わたしたちは本当の満足が与えられるのであります。キリスト・イエスにあって私たちを愛しておられる神様を仰ぐと、私たちを取り巻いている状況がいくらひどい状況であっても、神様の愛を感じることができ、その愛によって満足するのであります。

　　今も、その声を覚えていますが、子供のころ祖母がよく歌った讃美歌があります。題名は「選び受けし身よ」です。韓国の讃美歌ですので、おそらく日本の讃美歌にはない讃美だと思います。こういう内容のものです。「えらび受けし身よ、いずこにもゆく。かなしみ、よろこび、すべてをゆだね。だれとめられよか、だれとめられぬ。主に従う身は、だれもとめられぬ。すべての栄光、主よ受けたまえや。さげすみ、くるしみ、われ十字架にない。すべてをささげて、感謝もってつかえん。われみなささげて、感謝もってつかえん」。私立ちは「なぜ、自分がこんな状況に置かれているのだろうか」、ということを不満に思うのではなく、むしろ、「ここまで送ってくださった神様の御旨は何なのか」、ということを考えることが大事なのです。厭世主義、悲観主義、懐疑主義。


　　パウロの秘訣（１２－１３）
　　１２節です。「貧しくくらすすべも、豊かにくらすすべも知っています。満腹していても、空腹であっても、物があり余っていても不足していても、いかなる場合にも対処する秘訣を授かっています」。その秘訣とは、キリストなのです。１３節です。「わたしを強めてくださる方のお陰で、わたしはすべて可能です」。

　　ここでパウロのいう「すべて」とは、すべての環境、すべのこと、すべての出来事、すべての瞬間、などを意味すると思います。すべての状況、環境を克服する力をパウロはもっていたのです。その力は「神の力」であり、その神の力が臨むとき、すべてのことを克服することができるのであります。イエス・キリストを通じてくださる神の力があったから、パウロは確信をもってすべてのことに臨むことができたのであります。

　　１３節にもう一度、戻りましょう。「わたしを強めてくださる方のお陰で、わたしはすべて可能です」と、パウロはいうのです。「わたしを強めてくださる力」とは「神の力」を指すのですが、その力によって自分が強められるというのは、神の力は「生きる力」であるの意味だと考えられるのでしょう。伝道者として様々な苦難を乗り越えることができた原因には、神の力で生きていたからでしょう。神が力を貸してくださったのです。神が力をもってパウロと共にいたのです。神が力でパウロの変わりに苦難と真正面に取り組んでくださったのです。

　　パウロのいう「力」というのは「dunamis」というのです。これは「ダイナマイト」の語源です。ダイナマイトは爆発的な威力をもつものです。トンネルを作るとき、山を爆発させるとき、ダイナマイトはよく使われるのでしょう。わたしたちを強めてくださる神の力は、ダイナマイトのようなものなのです。わたしたちの前にどんな問題があっての、それはわたしたちを苦しめることができないのです。一時、ある期間の間には、苦しめられるかみしれません。しかし永遠に苦しめることはできないのです。わたしたちは、神の力で、神のダイナマイトで、いつも勝利の生活を送っているのです。

　　わたしたちは、ある環境に閉じ込められているのではありません。わたしたちを閉じ込めようとしても、それはできないのです。それは、神の力に生きるからです。マタイ１４：２２以下ですが、弟子たちは湖の上を歩いておられるイエスさまをみます。ペテロがイエスさまに申し出て、そしてイエスさまの命令にしたがって、舟から降りて水の上を歩き始めました。ペテロが、イエスさまを仰ぎながら歩くときには、湖でも歩くことができたのです。しかし、風をみて、強い風に気づいたとき、ペテロは怖くなり、沈みかえられたのです。湖を歩くことができたのは、ペテロの力ではなく、まさにイエスさまの力だったのです。神様の力に生きるということは、舟から一歩、踏み出すことなのです。周りのものを怖がるのではなく、それがわたしたちを飲み込もうとする大きな「波」であっても、一歩を踏み出すこと、これが神の力に生きることなのです。


　　満たしてくださる（１９）
　　１９節です。「わたしの神は、御自分の栄光の富に応じて、キリスト・イエスによって、あなたがたに必要なものすべてを満たしてくださいます」。パウロの宣教を助けてくれたのはフィリピの人々であったのです。彼らの助けは「パウロの働きに参加」（１５）したことだったのです。１８節です。パウロは「わたしはあらゆるものを受けており、豊かになっています」と言っています。これは、フィリピの教会から「充分な代価を受けています」という意味なのです。だから、パウロはそれを「香ばしい香り」といい、「神が喜ばれるいけにえ」というのです。キリスト者の奉仕によってパウロの宣教は豊かな実を結ぶことができたのであります。１９節でパウロが「必要なものを満たしてくださるのです」という箇所はこうした意味をもつのです。

　　キリスト者の奉仕は、「香ばしいいけにえ」です。その奉仕によって宣教の働きは前進されるのです。それと同時に、奉仕というのは神にささげる礼拝なのです。しかし、わたしたちの奉仕というものをほんのわずかなものではありませんか。小さなものではないでしょうか。しかし、それで神の宣教が前進されるのは、神がそれを用いて豊かなものにするのではないでしょうか。必要なものすべては神からくるのです。

　　パウロは１９節においても「すべて」という言葉を用いているのです。「すべて」は何を意味するのでしょうか。①わたしたちの霊的な必要、肉的な必要、考えていること、②その考えに従って、そして考えを越えたところまで、神は具体的に救済策をくださる、ということだと思います。わたしたちが考えた以上のものが、神からくるということでしょう。真実な神様の計画によって、神の僕らを通じて必要なものを満たしてくださる、ということなのです。


　　なぜ、わたしたちは満足することができるのでしょうか。キリストにある満足というのは、物質的なものが満たされたから、満足することとはその性格が異なると思います。神様がイエス・キリストにあって、環境、神の僕たちを用いて、わたしたちが考えている以上、満たしてくださるから、満足するのであります。神様によって満足するのであります。イエス・キリストにあって、わたしたちの救い主であられる神様が、わたしたちのために働いておられるので、満足するのではありませんか。