旧約聖書：イザヤ書　  ６章 １―１３節　  
新約聖書：使徒言行録１６章６－１０節
説教題目：「神の呼びかけと人間の応答」(하나님의 부르심과 인간의 응답)


　　問題の所在：「改革」か、それとも「回復」か
　　最近、私たちがよく耳にする言葉の中で一つは「改革」という言葉ではないかと思います。その意味は「古くなった制度や機構を新しい時代に適応するものに改めること」なのです。ところが、この「改革」という言葉は単に日本だけの流行語ではないようです。実は韓国の教会においても「改革」運動が流行っております。つい最近、イエス教長老会が発行する「基督公報」という新聞によると、韓国の教会は改革しなければならないと言っていますが、その改革の理由は①教会が成長していない。②教会の分裂と教派間の葛藤。③敷居の高い教会。こういったことでした。その記事を読みながら、何を改めれば教会は改革されるか、という疑問が生じました。

　　もし、教会が成長しないこと、教会間の葛藤、教会が外に向けて閉ざされていることが教会の改革の対象であれば、それは教会が教会としての本来あるべき姿を失ったから生じる問題だと言えるのです。あえて言わせれば、今の韓国の教会に必要なのは、「改革」ではなく、韓国社会における「塩と光」としての失った「召命」をキリストにあって「回復」することであろうと思います。このような問題は私たちも持っているのでしょう。イザヤ書６章を通して、「召命」に生きる意味について共に学んで参りたいと思うのです。

　　イザヤという預言者と本文の構造
　　ご存知のように、イザヤはいわゆる叙述預言者の中で一番偉大な預言者の一人と評価されている預言者です。イザヤというのは「ヤーウェは救い主である」という意味をもつ名前です。彼は、アモス、ホセア、ミカなどの預言者と同時代に活躍していました。イザヤが預言者として活躍した期間は、約５３年くらいではないかと言われております（BC７４０－６８７）。

　　イザヤ書のメッセージの主題は、「神の裁きと救い」です。神はご自身に背いた神の民を裁くのですが（１：２）、４１：１４、１６にあるように、究極的にはご自身の民を救われる方である、とのことです。このようなことがイザヤ書の各書に繰り返して出ております。

　　先ほど、読んでいただきました箇所は「イザヤの召命物語」です。この箇所は二つに分けることができると思います。前半は６：１－８までで、イザヤが神の神殿で「召命を受けること」が書かれております。後半は６：９－１３までです。預言者として神から召されたイザヤが宣べ伝えるべき「神の委任」の内容が記されているのです。

　　イザヤの自己認識
　　６：１を見ますと、イザヤは「ウジヤ王が死んだ年」に幻の中で神から召されるのです。幻の中でイザヤが見た「神殿」というのは、ヨハネの黙示録に出てくる「天上の教会」だと考えられます。幻の中でイザヤは、「天上の教会」に満たされている、神の栄光をみて、自分自身を見つめ直します。イザヤが悟ったことは、６：５にあるように、「自分は神の前で罪深いものであること」であり、「だから、王なる神を仰ぎみる資格がないものである」、ということであります。

　　６：５「私は言った。『災いだ。私は滅ぼされる。私は汚れた唇のもの。汚れた唇の民の中に住むもの。しかも、私の目は王なる万軍の主を仰ぎ見た』」と。罪深い人間であることを告白したイザヤを神は、イザヤの「汚れ」を取り去ってくださり、「罪の赦し」を与えられました。

　　キリスト者である私たちにとって身につけなければならない知識があります。「神に関する知識と自己に関する知識」であります。これらの知識は分離されるものではなく、互いに通じ合う知識であります。神を知れば知るほど、自分のことがよく分かるようになります。「神という鏡」に自分を映してみれば、どんなに罪深いものであるか、が分かります。その「鏡」というのは、単に外見だけではなく、私たちの心も写してくれるのであります。そこに写された自分が本当の自分のであり、そこではじめて自己に関する知識が生まれてくるのです。

　　イザヤが得た「自己認識」というは、まさにこうしたものであります。神は魂の救いという働きをさせる前に、言い換えれば、神の働き人として召される前に、自分のことをはっきりと分かるようにしてくださり、したがって神のみを信頼するようにしてくださるのです。

　　神への献身
　　神より罪赦されたイザヤは預言者としてつかわされるのです。８－９節「その時、私は主の御声を聞いた。『誰を遣わすべきか。誰が我々に代わって行くだろうか。』私は言った。『私がここにおります。私を遣わしてください。』主は言われた。『行け、この民に言うがよい』」。イザヤの神への献身は神に対する素朴な信仰の表現でした。召命というのは、神の呼びかけに信仰をもって応じた結果なのです。神を信頼していきますという告白なのです。神のために生きていきますという決心なのです。神の救いの計画、神の思いを自分のものとして受け容れることなのです。神の呼びかけに「すぐに」反応することなのです。

　　先ほど並行して呼んで頂きました、使徒言行録１６：１０節「パウロがこの幻をみたとき、私たちはすぐに、マケドニアへ向けて出発することにした。マケドニア人に福音を告げ知らせるために、神が私たちを召されているのだと、確信するに至ったからである」とあります。

　　パウロは神から新たな道を示された後、躊躇しませんでした。彼は、マケドニア宣教のために、計画などを立てることをもしませんでした。パウロらは神のしるしを受けてから「すぐに」立ち上がって、出発したのです。そこには、神の示しには間違いのないものだというパウロの召命意識が働いたからです。結果を予測したり、見通しがみえないと、すぐには行動に移ることはしない、私たちからみると、無謀な行動とみえるかもしれません。

　　教会における福音宣教というのは、神のお示しにすぐに反応することなのです。「え～と」とか、「ちょっと、待ってよ」とか、あるいは「いや、それは、今の我々にとって、ちょっと、無理ではないでしょうか」と、よく口にするが、神に対してそのようなの言葉は、要りません。おそらく、パウロが「すぐに、出発することにした」ことは、神に対して「はい、今、行きます」と答えたからでしょう。福音宣教に携わっている者の模範をイザヤとパウロは、身をもって教えているのです。

　　神の委任
　　神の召しにすぐに反応しイザヤに「神の委任」、つまり「宣教の内容」が与えられました。それは９－１３節に書いてあるように「心をかたくなに」させることなのです。特に、１０節を読んでみますと、「この民の心をかたくなにし、耳を鈍く、目を暗くせよ。目で見ることなく、耳で聞くことなく、その心で理解することなく、悔い改めていやされることのないために」。１１―１２節においても同じようなことが書いてあります。「主は答えられた。町々が崩れ去って、住むものもなく、家々は人影もなく、大地が荒廃して崩れ去るときまで。主は人を遠くへ移される。国の中央にすら見捨てられるところが多くなる」。イザヤが受けた召命は「神の審判の全体」を語ることだったのです。

　　一見、神の裁きのメッセージのように見えます。しかし、これは神の逆説的なメッセージであります。つまり、イザヤ５：２４にあるように、「神の教えを拒み、神の御言葉を侮った行為の結果がどれほど大きな罪なのか」を神はイザヤの口を用いて語られるのです。神は審判のメッセージを語ることを通して、イスラエルの人々が、イザヤのように、自分たちが罪深いものであることを悟らせるのであります。しばらくの間、イスラエルの人々は暗いトンネルの中に置かれるかみしれない。神が彼らを見捨てられたかのように見えるかもしれない。神への信仰が無駄なものになってしまったように感じるかもしれない。将来への希望を失ってしまうかもせれない。「しかし、それでも切り株が残る。その切り株とは聖なる種子である」（１３節）とあるように、神は必ずイエス・キリストにあって選ばれた民を救われるのであります。イザヤは「神の審判の全体の模様」を語ることを通して、神の希望を語ったのであります。神は求めておられる「信仰の回復」をイザヤは語るのであります。イザヤは、律法、審判のみを語るのではなく、神の福音を語っているのであります。

　　教会における福音宣教というのは、神への信仰を失ってしまった人々に対して、彼らがその信仰の回復することができるように、働きかけることなのです。私たちの記憶の中から消されてしまった人々が神の元に帰ってくるように、教会は力を尽くさなければなりません。イエス・キリストが例え話で教えられたように、見失った一匹を見つけ出すまで探し回らなければなりません（ルカ１５：４－７）。まさに、神に常に背いている私を神はキリストにあって愛して居られることと同じことではないでしょうか。

　　常に神の「召命」を自覚しながら、神への献身と神から委託された働きを全うして参りたいと思います。