マタイ８：１－４　　「イエスとらい病を患っている人」(예수와 나병환자)　　


　　　

  人間を疎外させる病気
  中世ヨーロッパでらい病は「災い」でした。西暦１００年ごろのローマの歴史家であったプリニ（Pliny）という人の証言によると、このらい病は紀元６１年まで、シリアの駐屯していたローマの兵士たちによって、はじめてイギリスに移されたそうです。

  今日の不治病の一つは癌ですが、イエスの時代においてはらい病でした。歴史家ジョセプスによると、イエスの時代のらい病者は「生きている死体」として取り扱われていたそうです。らい病者は、生きているにも関わらず、「既に死んでいる者」とされていたのです。ユダヤ教の教師ら、つまりラビたちは、他の病気に関する治療策はある程度、あったわけなのですが、らい病については「お手上げ」だったのです。それゆえ、もし、らい病を患っていた人が、癒されたら、それは神の癒しとして信じていたのです。

  レビ記１３：４６によると、らい病の疑いがある場合、その人は一人で宿営の外に住まねばならなない、ということでした。らい病者は、人間の社会から「隔離」されたのです。らい病者だけを隔離したのではなく、彼のもの全てを「焼き捨てなければならない」と、レビ記１３：５７を通して、神は指示しているのです。らい病は人間を人間の社会から「疎外させる病気」だったのです。

  イエスに近寄ったらい病者（２節）
  今日の箇所２節で「一人のらい病を患っている人が、イエスに近寄り、ひれ伏して、主を御心ならば、私を清くすることがおできになります、と言った」と書かれています。人々から疎外されていたらい病者がイエスの御前に出たということは、驚くべきことです。おそらく、この人は他の宗教指導者、つまりユダヤ教の教師らとは、まったく異なることをイエスにはあったことを知っていたと思われます。ユダヤ教の教師らは、らい病を患っている人と会うと、石を投げ、少なくとも１００ｍ以上は接近しないように、していたのです。彼らは律法が教えている通りに、汚れている人と見做していたのです。友達になってくれなかったのです。人格として認めなかったのです。

  このらい病者がイエスに近寄ったことは、イエスの「人となり」を教えていることです。イエスは誰でも「親しくなり安い方」であること、イエスは疎外されている人とは「距離を維持しない」ことなのです。ユダヤ人たちは世話してくれなかったのですが、イエスは世話してくれる方であること、つまり、イエスは愛情をもって接してくださる方、ということを、らい病者の行動から窺うことができるのです。

  イエスの癒し（３節）
  イエスの癒しは、まず触ってはいけない人を触ることを通して、なされた出来事でした。３節で、イエスが手を差し伸べて、その人に触れ、よろしい。清くなれ、と言われると、たちまち、らい病は清くなった」と書かれています。ただ、言葉だけではなくて、イエスは触ることを通して癒したのです。この世の基準、判断、常識をイエスは身をもって破ったのです。イエスの癒しは、患者と一定な距離を維持しながら、治療する非人格的なものではなく、直接に患者の身を触る「人格的な方法」であったのです。

  イエスはこのらい病者を、汚れていた者と見たのではなく、癒される可能性がある、新たに生まれ変わる可能性が十分ある人格として見たのです。イエスは触ってはいけない人はいない、ということを教えているのです。言い換えれば、イエスは誰にも愛されていなかった人を愛していた、ということなのです。イエスには愛されない人は誰もいないのです。

  律法を成就する（４節）
  イエスはこのらい病者を癒された後、彼に神の律法の規定を守ることを教えられました。その規定はレビ記１４章に書かれているように「清めの儀式」です。神に祭壇で贖罪の儀式として、焼き尽くす献げ物と穀物（こくもつ）の献げ物を燃やしてささげる儀式です（レビ記１４）。４節で、「モーセが定めた供え物をささげ、人々に証明しなさい」とイエスは、言われました。

  イエスは癒しの奇跡を通して、病気から癒されることは、神より贖われたことを教えているのです。神に焼きつくし、献げ物をささげる行いは、神に対する感謝をささげなさい、という教えであり、人々に神が病気を癒してくださったことの証しだったのです。イエスのこの言葉は、神に感謝することを通して、このらい病者が、人々に誤解されなく、一人の社会人として、またこの人が自由人として生活できるようにしてくださった、イエスご自身の配慮だったのです。キリストは身をもって律法は神の御言葉であり、イエス・キリストにあって神から救われた人間は誰でも律法を守るべきである、ということを教えているのです。

  キリストにあって
  キリストにあっては疎外される人はいないのです。キリストにあっては汚れている人はいないのです。触ったらいけない人もいなのです。神から呪われている人もいなのです。キリストは誰でも喜んで受け入れるのです。私たちの悩み、病気、苦しみすべてをイエスの御前に持っていけば、キリストは奇跡を通して、私たちを癒してくださるのです。